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中国語の方言について

tag: 中国語

創知法律事務所大阪オフィスの春田です。
初めて記事を投稿致します。
今回は、簡単な自己紹介も兼ねて、中国語について書こうと思います。

私は、もともと、語学にとても興味がありました。趣味といってもいいほどです。この趣味が高じて、今では日本語のほかに、英語と中国語を使って仕事をする機会にも恵まれております。
ただ、語学といっても、外国語だけというわけではありません。「言葉」というものに興味があったのです。例えば、日本語でも、異なる表現で同じ意味内容を表す方言にとても興味をもったことがあります。大学時代は、関西圏以外から来た友人に、よく「『ものもらい』は熊本ではなんて言うの?」などと聞いたりしていました(関西人の私は「めばちこ」といいます。)。

もちろん、日本語だけではなく、英語にも方言があります。アメリカでも、西と東で発音が違ったりして、発音の仕方で出身地などが分かります。

しかし、方言といえば、やはり中国語です。中国語には、実にたくさんの方言があります。
クライアントや同僚などからも、中国語に関する質問をよく受けるので、ここで中国語の方言や北京語について簡単にご紹介いたします。

1 中国の方言は何種類あるの?
以前、香港に行った友人から、「中国語には、北京語と広東語の2種類があるんだね。」といわれました。
確かに、広東語は、有名な方言の1つです。特に、香港や深圳など、主要都市で話されていることも多く、印象的な方言ですね。しかし、中国の方言には、2種類どころか、数千・数万もの種類の方言があると言われております(大きな分類としては7大方言などというものもありますが、そこからの細分化がすごいのです。)。
そして、その方言のバリエーションは日本とは比べ物にならないほど豊富で、同一国家の言語だとは思えないほどです。
そのため、出身地の異なる中国人同士でも、方言を使うと全く意思疎通ができません。
私も、中国でタクシーに乗っていた際に、日本語で同僚と話しているのを聞いたタクシーの運転手から、「新疆ウイグル自治区の方ですか?」と言われたことがあります。中国人が日本語を聞いても、中国の方言なのか外国語なのかが分からないほど、大きく隔たりのある言葉だということが分かった印象的な出来事でした。

2 やっぱり共通語=北京語?
また、共通語(Mandarin。中国語では「普通話」)のことを指して「北京語」と仰る方が少なくありません。しかし、厳密にいえば、共通語と北京語は異なるものです。日本で言うと、標準語と江戸弁は異なるものであることと似ています。
ただ、他の方言に比べると、共通語と北京語は、かなり似ています。それは、共通語が北方の言語を基準にして定められたからです。しかし、中国で共通語が正式に制定され、教育機関において用いられるようになってから、まだ60年ちょっとしか経過しておりません。そのため、それ以前に教育を受けた方は、依然として共通語を話せない方も多く存在しています。

3 共通語と北京語の違い?
では、共通語と北京語は、どのように違うのでしょうか。
北京語の特徴にはさまざまなものがあります。北京でしか通用しない言葉(底儿掉,撒丫子等)もありますし、訛りや話し方など、様々な角度から見た特徴があるのです。そのすべてをご紹介すると大変なので、ここでは、北京語の特徴の1つである「r化(アール化)」について簡単にお話しします。

4 「r化(アール化)」とは?
単語等に「儿(児)」をつける独特な習慣を「r化」といいます。
「儿(児)」は、ピンインでは「ér」と書き、英語の「r」の発音ととても似ています。確かに、共通語でも、語尾に「儿(児)」をつけることはあります。しかし、北京語では、他の地方の言葉に比べて、「儿(児)」をつけて発音する頻度がとても高いです。

5 「儿(児)」をつけると意味が変わるの?
「儿(児)」を付けても、原則として意味そのものは大きくは変わりません(小辫儿などの例外はあります。)。しかし、ニュアンスが少し変わります。「r化」の説明の仕方は実に様々なのですが、一般に、「儿(児)」は、
・小さいもの、かわいいもの
・正式でないもの、卑近なもの
などを表すときに使います。
 例えば、
・小猫(子猫) → 小猫儿
・聊天(雑談) → 聊天儿
・画(絵)   → 画儿
・饭馆(大衆食堂)→ 饭馆儿
・脸蛋(ほっぺ)→ 脸蛋儿
などがあります。
 また、紫禁城を取り囲む門についても、正式なものについては「儿(児)」はつかず、当時身分の低いとされていた者などが通っていた門には「儿(児)」がついたりしたそうです(东便门儿,西便门儿,广聚门儿)。
 同様の趣旨で、人の苗字+儿(児)で、「〇〇君」、「〇〇ちゃん」という、親しい呼び方にもなります。例えば、王さんを呼ぶときに、「王儿」というと、「王君・王ちゃん」という意味になります。
 このように、「儿(児)」をつけることで、その言葉がくだけるニュアンスになるのが一般的です。

6 北京語の「儿(児)」
ここまでの説明は、実は、北京語だけではなく、共通語(普通話)にも一応当てはまります。しかし、北京語では、その傾向が極めて強い上に、「儿」をかなり強調して話す傾向があります。また、以上の説明に加えて、ルールに当てはまらない「r化」をする傾向もあります。
例えば、文脈から全部言わなくても分かるだろう、というようなときは、必要な箇所以外を「儿(児)」でまとめてしまうことがあります。例えば、
・昨天、今天、明天(昨日、今日、明日)→昨儿,今儿,明儿
・不是(違います)→不儿
・多少钱(いくらですか)→多儿钱
・味道(味)→味儿
などなど、とにかく儿で省略するのです。
 共通語ではここまで儿をつけることはありませんので、北京語の特徴といえます。
 他にも、北京語の特徴として、吞音(言葉を飲むように話すため、chi,zhi,shiが全て「ri」のように聞こえる現象)などもあるので、北京語を聞くと、「r」の出現率がとても高くなるのです。実際、北京語を聞くと、「儿(児)」ばかりが耳に入ってくるので、初めて聞いたときは全く理解できませんでした。
例文をあげましょう。
(共通語)昨天我跟女儿一块去饭馆吃面条,那里的味道非常好。
(北京語)昨儿我跟女儿一块儿去饭馆儿日面条儿,那儿的味儿非让好。(※吞音は当て字)
(日本語)昨日娘と一緒に食堂に行って麺を食べました、そこの味はとてもよかったです。

 この傾向は、北京を中心として、天津、瀋陽等、北京を中心とした地方でしばしば見られます。しかし、中国の大部分では、北京ほど「r化」はしません。特に、南方では全くと言っていいほど「儿(児)」を使いません。そのため、よく「儿(児)」を付けて話すと「あ、北京の方ですか!」などと言われてしまいます。
 しかし、この「儿(児)」。ニュアンスを知れば知るほど、とても面白いです。こういう言葉の崩し方をするのか、これは正式じゃないと認識して話しているのか、などとても勉強になることが多いです。私も機会があるとついつい「儿(児)」の使い方に着目して見聞きしてしまいます。
 中国語は本当に奥が深いです。