Blog

契約書の作成に関するミニノウハウ(1)

tag: 契約法

藤本です。

私の業務の1つである契約書の作成や検討、修正は、いまAIによって取って変わられようとしているようです。ただ、契約書の一部又は全部がAIによって作成可能であるとしても、そのAIの嗜好を定義するのはやはり人間でありAIを使いこなそうとするのも人間ですので、AIは、PCや携帯と同じく、1つのツールとしては使われるものだとは思いますが、我々人間が、契約書作成のノウハウを何ら有しなくなってしまえば、結局AIが作った契約書を正しいものとして認識し受容することもできないと思います。

前置きが長くなってしまいましたが、契約書をレビューしながら、世の中の人がもっと知ったら良いのに、と思う点があれば、少しずつブログ化しても良いかなと思いまして、ここに記載するものです。

さて、業務委託契約や、共同開発契約等で、知的財産権の譲渡が発生する条項があることがあります。その中で、著作権を譲渡する際に、こういう条文を見たことがありませんか?

「甲は、乙に対し、本契約に関して甲が作成した文書の著作権(著作権法第二十七条及び第二十八条に規定する権利を含むが、これらに限られない。)及びこれに関連する権利の全てを譲渡するものとする。」

この「著作権法27条28条に規定する権利」をわざわざ明文で記載するのは、なぜでしょうか?

それは、著作権法27条や28条を見ても良くは分かりません。

(翻訳権、翻案権等)

第二十七条 著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。

(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)

第二十八条 二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。

実は、著作権法61条にヒントがあります。
(著作権の譲渡)

第六十一条 著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。

2 著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。

つまり、27条28条に規定する権利は、明記しないと、「譲渡した者」(上記の例でいえば、甲)に「留保されたものと推定」されてしまう、つまり、譲渡されなかったことになってしまうのです。

もう1つ、こういう条文も見たことありますよね?

「甲は、本契約に関して甲が作成した文書に関する著作者人格権を行使しない。」

なんて権利を全て譲渡するのに、なお甲が著作者人格権を行使するとか、しないとか規定があるのでしょうか?

それは、著作者人格権は、譲渡できないとされているからです。

(著作者人格権の一身専属性)

第五十九条 著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない。

譲渡できない著作者人格権とは、何でしょうか?

(公表権)

第十八条 著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。以下この条において同じ。)を公衆に提供し、又は提示する権利を有する。当該著作物を原著作物とする二次的著作物についても、同様とする。

(2項3項4項省略)

(氏名表示権)

第十九条 著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示についても、同様とする。

2 著作物を利用する者は、その著作者の別段の意思表示がない限り、その著作物につきすでに著作者が表示しているところに従つて著作者名を表示することができる。

3 著作者名の表示は、著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、省略することができる。

(4項省略)

(同一性保持権)

第二十条 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。

(2項3項4項省略)

つまり、著作者に帰属する公表権、氏名表示権及び同一性保持権は譲渡できないのですが、著作権は譲渡されるのに、これを著作者が自由に行使できるとすると困ることもあるので、その不行使を譲渡時に約束する訳ですね。

どうしてそんなことになるかというと、著作権法は、文化の保護を一応謳っているので、たとえ著作権を譲渡する時であっても、財産権だけでは割り切れない、著作者に残る権利というのがあると考えているからです。

このように、契約書の検討においては、契約の客体となる権利に応じて、様々な条項を考える必要があります。AIがこれらに配慮して条項を用意してくれると思いますが、そうだとしても、じゃあ用意された条文をそのまま使っていいのか、削除してもいいのか、その判断をするときに、人間が上記の基礎的な知識がないと、最終判断できないですよね。。。。

これからも、ときどきそういったミニノウハウを書いていきますね!