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新型コロナ「緊急事態宣言」とは何か(藤本)

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目次
第1 はじめに
第2 「緊急事態宣言」の法令根拠は何か?
第3 特措法が考える措置
1 平時(未発生期):対策(行動計画)の策定
2 発生期(海外発生期):対策本部の設置、水際対策
3 国内感染蔓延期:緊急事態宣言等
4 「緊急事態宣言」に強制力があるのか?
5 「都市封鎖」は可能か?
6 「補償」は可能か?
7 裁判所は止まらないのか?
第4 まとめ

 

第1 はじめに

弁護士法人創知法律事務所の藤本です。

新型コロナウイルスの蔓延状況は、深刻さを増しています。

(ご参考)感染者数の推移等に関する開示情報
厚生労働省発表の情報
東京都の最新感染動向
大阪府の最新感染動向
札幌市の最新感染動向

そして、まもなく「緊急事態宣言」が発令されると噂されています。確かに、今日(4月4日)、東京都における1日に報告された新型コロナウイルス感染者数が、初めて(指数関数的に感染者が爆発的増大をすると言われる1つの目安となる)100名を超え、都市部を中心に状況が悪化していると感じられ、「緊急事態宣言」は、待ったなしの状況とも言えると思います。

最初に新型コロナウイルスが蔓延した武漢では、都市封鎖がなされ、全ての新幹線が武漢を通過し、地下鉄バス等の通勤用公共交通機関も停止となり、殆ど全ての移動が制限されました。

我が国で「緊急事態宣言」が発令された時どうなるのか。政府や自治体がどのような措置を講じるのか。

私は弁護士ですので、法令を解釈して、「緊急事態宣言」により予想される措置等について、考えていきたいと思います。但し、新型コロナウイルス感染症の専門家ではありません。これでカネを稼いでいる訳ではないので、間違いがあるかもしれません。そういう場合は、是非情報提供をいただけますと幸いです。随時更新したいと思います。

 

第2 「緊急事態宣言」の根拠法令は何か?

政府も、東京都など地方自治体も、憲法と国会において制定された法律を執行するというのが役割です (法律による行政の原理)。勿論、全てのルールを国会において制定できる訳ではありません。柔軟な対応も必要となります。しかし、行政というのは、強大な権限を有しますので、たとえ善意の行為であっても憲法や法律を破ってしまうと、それによって一部の人かもしれないけれども、人権が侵害されてしまうことがあります。例えば、緊急に病院を建てなければいけないかもしれない。緊急に物資を徴集しなければならない。緊急事態のためには必要なことでしょうが、それによって、土地の所有者が土地の権利を失い、物資の所有者が強制的に売りたくない物を売らされてしまうかもしれません。そこで、行政の行為というのは、基本的に法律によって制約を受けることになります。

新型コロナウイルスの蔓延状況が判明してきたのは、今年に入ってからです。新しい病気ですので、その対策をするための適切な法律がありませんでした。そこで政府は、既に存在する「新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号)」(以下「特措法」といいます。)の附則を改正して、特措法2条1号の定める「新型インフルエンザ等」の定義に、期間限定(施行の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日=令和3年1月31日まで)で、「新型コロナウイルス感染症」を含めることにしました(特措法附則1条の2第1項)。この特措法附則の改正は、令和2年3月13日に成立し、3月14日に施行されました。

ですので、「新型コロナウイルス感染症」の対策の話をしているのですが、適用される法律としては、「新型インフルエンザ等対策特別措置法」ということになります。

なお、実際の改正法の成立は令和2年3月13日でしたが、特措法の改正案が提案されたのは、令和2年2月でした。そこで、「新型コロナウイルス感染症」の定義においては、「病原体がベータコロナウイルス属のコロナウイルス(令和二年一月に、中華人民共和国から世界保健機関に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたものに限る。)であるものに限る。第三項において同じ。」と限定されています。つまり、中華人民共和国から世界保健機関に対して1月に報告されたものとは別のベータコロナウイルス属のコロナウイルスに対しては、現状特措法の適用ができない点には、留意を要します。

 

第3 特措法が考える対策

新型コロナウイルス対策を「新型インフルエンザ等対策特別措置法」に基づいて政府や自治体が行うことは良く理解できたと思います。それでは、この特措法は、どのような対策を考えているのでしょうか。

特措法を眺めますと、三段階に分けて対策を行うことになっています。

1 平時(未発生期):対策(行動計画)の策定

政府と自治体が有事にどうするのか「政府行動計画」「都道府県行動計画」「市町村行動計画」を定めておきます(特措法6~8条)。更に、「指定公共機関又は指定地方公共機関」(これがどこかは、法律ではなく政令で定められています。例えば、JRなどです。)も、「政府行動計画」「都道府県行動計画」に基づき、「業務計画」を作成し、関係都道府県知事及び関係市町村長に通知するとともに、その要旨を公表します(特措法9条)。

例えば、「政府行動計画」を見ると、感染蔓延期には「欠勤者の増大が予想されるが、国民生活・国民経済の影響を最小限に抑えるため必要なライフライン等の事業活動を継続する。その他の社会活動をできる限り継続する。」と記載されており、鉄道等公共交通機関をストップして感染症の拡大を防止するという行動計画を有していないことが分かります。

例えば、JR東日本が公表している「業務計画」の要旨のリンクを貼っておきますね。これによると、JR東日本の従業員が欠勤することにより最大40%が欠勤する(ために減便が発生すると思われる)ものの、鉄道の運行を完全に止めるということは、想定していないことが分かります。

また、JR東海が公表している「業務計画」の要旨によると、「新型インフルエンザ等の国内発生時においては、新型インフルエンザ等の流行の具体的な状況、社員への感染状況、政府対策本部等から発信される情報・要請等を踏まえ、旅客の輸送を適切に実施する」と記載されていますので、やはり、鉄道の運行を完全に止めることは想定していないように思われます。

実は、裁判所も同様に策定しています。ここには、「政府対策本部が国内感染期に入ったことを宣言した場合には,発生時継続業務以外の業務を縮小又は中断し,新型インフルエンザ等発生時の業務体制に移行する。また,政府対策本部が,新型インフルエンザ等緊急事態(特措法第32条第1項)を宣言した場合には,各裁判所の実情等に応じて,発生時継続業務以外の業務を大幅に縮小又は中断する。」との記載があります。

なお、これらの計画は、「新型インフルエンザ等」のために策定されたものであって、新型コロナウイルス感染症のために策定されたものではないのですが、読み替えにより、「新型コロナウイルス感染症を含む新型インフルエンザ等に関する事項として行動計画等に定められているものとみなす。」ことになっています(特措法附則1条の2第3項)。

2 発生期(海外発生期):対策本部の設置、水際対策

感染症の発生が確認されると、「政府対策本部」「都道府県対策本部」が設置されます(特措法15条、22条)。そして、予防的に、「特定接種」(対策の実施に携わる者に対し、臨時に予防接種を実施すること等)を行い(特措法28条)、海外からの流入を防ぐために、入国者を検疫所で停留させる(特措法29条)、飛行機を運航する事業者に対し日本への来航を制限するよう要請する(特措法30条)等の措置をとります。
また、医療関係者に対して、医療の提供等の要請を行います(特措法31条)。

3 国内感染蔓延期:緊急事態宣言等

しかし、当該感染症が国内で発生し、その全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態(以下「新型インフルエンザ等緊急事態」という。)が発生したと認めるとき、政府対策本部長は、新型インフルエンザ等緊急事態が発生した旨を公示し、国会に報告をします(特措法32条1項)。

その際、
一 新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき期間
二 新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき区域
三 新型インフルエンザ等緊急事態の概要
を併せて公示します。

この「期間」は、2年を超えてはいけないことになっています(同条2項)。延長可能です。

この「新型インフルエンザ等緊急事態」の宣言がされたときに、法がどのような措置を講じようとしているかを概観します(細かい要件等省略)と、

・特定都道府県知事による、生活の維持に必要な場合を除きみだりに外出しないこと、その他の新型インフルエンザ等の感染の防止に必要な協力の要請(特措法45条1項)
・特定都道府県知事による、学校、社会福祉施設、興行場等に対し、当該施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止等の要請(特措法45条2項)
・住民に対する予防接種(特措法46条)
・医療等の確保、特定都道府県知事による臨時の医療施設(特措法47条、48条)
・特定都道府県知事による臨時の医療施設を開設するため、土地、家屋又は物資の使用(特措法49条)
・特定都道府県知事又は特定市町村長による物資及び資材の供給の要請(特措法50条)
・電気及びガス並びに水の安定的な供給に関する措置(特措法52条)
・運送事業者である指定公共機関及び指定地方公共機関による旅客及び貨物の運送を適切に実施するための必要な措置(特措法53条1項)
・通信及び郵便等の確保(特措法53条2項3項)
・指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は特定都道府県知事による、緊急事態措置の実施に必要な物資及び資材等の運送の要請(特措法54条)
・特定都道府県知事による、緊急事態措置の実施に必要な物資(医薬品、食品その他の政令で定める物資に限る。)であって生産、集荷、販売、配給、保管又は輸送を業とする者が取り扱うもの(以下「特定物資」という。)について、その所有者に対する当該特定物資の売渡の要請等(特措法55条)
・内閣による、国会が閉会中又は衆議院が解散中等の状況における、金銭債務の支払の延期及び権利の保存期間の延長について必要な措置を講ずるための政令の制定(特措法58条)
・指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長並びに地方公共団体の長による、生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律(昭和四十八年法律第四十八号)、国民生活安定緊急措置法(昭和四十八年法律第百二十一号)、物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)その他法令の規定に基づく措置(特措法59条)
・政府関係金融機関その他これに準ずる政令で定める金融機関による、緊急事態に関する特別な金融を行い、償還期限又は据置期間の延長等の措置を講ずるよう努力(特措法60条)
・土地、家屋又は物資の使用等又は特定物資の収用・保管等のための立入検査(特措法72条)

が掲げられています。

これらの措置を行った場合のうち、
・土地、家屋又は物資の使用等(特措法49条)
・特定物資の収用・保管等(特措法55条2項、3項、4項)
については、国及び都道府県が通常生ずべき損失を補償しなければならず、また、医療機関に対する要請については、実費の弁償をしなければならないとされています(特措法62条)。

また、都道府県は、特措法31条の要請等に応じた医療関係者がそのため死亡し、負傷し、若しくは疾病にかかり、又は障害の状態となったときは、その者又はその者の遺族若しくは被扶養者がこれらの原因によって受ける損害を補償するとされています(特措法63条)。

4 「緊急事態宣言」に強制力があるのか?

「緊急事態宣言」が出た後の各種の措置ですが、まず罰則があるかないかが気になるところです。

・特定物資の保管命令(特措法55条3項4項)に従わず、特定物資を隠匿し、損壊し、廃棄し、又は搬出した者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金(特措法76条)
・立入検査(特措法72条)を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は同項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をした者は、三十万円以下の罰金(特措法77条)

が定められています。

つまり、「要請」(お願い)ベースが大半で、医療関係者を除く一般人に対して強制力があるものは、臨時の医療施設を開設するための土地、家屋又は物資の使用に関するもの、特定物資の売り渡しや保管に関するものに限られています。

逆に言えば、一般の人に対し影響力のある「みだりに外出しないこと、その他の新型インフルエンザ等の感染の防止に必要な協力の要請」や「学校、社会福祉施設、興行場等に対し、当該施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止等の要請」といった特措法45条1項2項の措置については、罰則がなく、強制力に乏しい面があります(但し、施設に対する要請については、「正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないとき」「まん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り、当該施設管理者等に対し、当該要請に係る措置を講ずべきことを指示することができる。」とはされています(特措法45条3項)。

5 「都市封鎖」は可能か?

また、法令を見ても、政府行動計画を見ても、鉄道等公共交通機関の業務計画を見ても、鉄道の運行の減便はやむを得ず想定されているとしても、止めることまでは想定されていないと言えます。つまり、特措法では、例え「緊急事態宣言」を行っても、都市への公共交通機関を止める「都市封鎖」を行うことはできないのです。

他方、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)(以下「感染症法」といいます。)には、以下のような規制があります。

(建物に係る措置)
第三十二条 都道府県知事は、一類感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある建物について、当該感染症のまん延を防止するため必要があると認める場合であって、消毒により難いときは、厚生労働省令で定めるところにより、期間を定めて、当該建物への立入りを制限し、又は禁止することができる。
2 都道府県知事は、前項に規定する措置によっても一類感染症のまん延を防止できない場合であって、緊急の必要があると認められるときに限り、政令で定める基準に従い、当該感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある建物について封鎖その他当該感染症のまん延の防止のために必要な措置を講ずることができる。
(交通の制限又は遮断)
第三十三条 都道府県知事は、一類感染症のまん延を防止するため緊急の必要があると認める場合であって、消毒により難いときは、政令で定める基準に従い、七十二時間以内の期間を定めて、当該感染症の患者がいる場所その他当該感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある場所の交通を制限し、又は遮断することができる。
(必要な最小限度の措置)
第三十四条 第二十六条の三から前条までの規定により実施される措置は、感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するため必要な最小限度のものでなければならない。

令和2年1月28日に制定された新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令(令和2年政令第11号)では、新型コロナウイルス感染症については、この感染症法32条、33条に基づく措置の適用がされていなかった模様です(参考)。しかし、3月26日に政令を改正して、新型コロナウイルス感染症についても、感染症法32条、33条の適用ができるようになりました(ご参考(新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令の一部を改正する政令(令和2年政令第60号))。

そうすると、あくまで「感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するため必要な最小限度のもの」に限って、建物への立ち入り規制や、72時間以内の交通の制限、遮断ができることにはなっています。そうすると、例えばですが、土日の「都市封鎖」というレベルであれば、感染症法を根拠として「要請」されることがあり得るかもしれません。

6 「補償」は可能か?

既に上記3で概観したとおり、この法律が想定している補償とは、

・土地、家屋又は物資の使用等(特措法49条)
・特定物資の収用・保管等(特措法55条2項、3項、4項)
・医療機関に対する要請についての実費の弁償
・医療関係者の死亡障害疾病等に対する補償

に限られています(特措法62条、63条)。

つまり、特措法では、外出自粛や休校等の「要請」(特措法45条)に基づく損害について、政府や自治体が補償することが想定されていません。また、所得補償など、各種給付についても、特措法の想定外です。

特措法が想定している経済的な措置は、上述の損害補償を除くと、上記3で概観したとおり、価格の安定に関する措置や、融資に関する措置(特措法59条、60条)に限られていると言ってよいと思います。

でも、だから給付も補償もしないというものではなく、あくまで特措法の想定にはないということに留まります。枠外で必要な政策を行うのが、政治というものではないかとは思います。

7 裁判所は止まらないのか?

本論ではないのですが、この法律や政府行動計画で、裁判所が「緊急事態宣言」が出た後にどうなるのか、分かる部分があるでしょうか。実は、若干ですが、言及がある部分があります。

実は、政府行動計画では、「新型インフルエンザ等の発生に関わりなく、行政による継続的な実施が強く求められる国民の緊急の生命保護と秩序の維持を目的とする業務や国家の危機管理に関する職務」が規定されており(政府行動計画84頁以下)、そこでは、裁判所の令状発付に関する事務が記載されています。

また、先述した最高裁の文書には、「政府対策本部が国内感染期に入ったことを宣言した場合には,発生時継続業務以外の業務を縮小又は中断し,新型インフルエンザ等発生時の業務体制に移行する。また,政府対策本部が,新型インフルエンザ等緊急事態(特措法第32条第1項)を宣言した場合には,各裁判所の実情等に応じて,発生時継続業務以外の業務を大幅に縮小又は中断する。」との記載がありますので、緊急事態宣言以後、通常の裁判を止めることは、ある意味想定されているとも言えなくはありません。既に、今週(4月6日~)の大阪地裁、大阪高裁の通常の民事訴訟の次回裁判期日は、「追って指定」(無期限延期)になっていると複数の弁護士から聞いています。

緊急事態宣言が出た後、東京地方裁判所から通知が出ていましたので、共有します。これによると、通常事件は「追って指定」になるが、以下の種類の事件は、継続されるようです。
・民事保全事件(行政事件の仮の救済手続を含む。)
・ドメスティックバイオレンス事件
・人身保護事件
・民事執行事件のうち特に緊急性のあるもの
・倒産事件のうち特に緊急性のあるもの

また、大阪高裁・地裁・家裁の対応についてですが、
・民事・家事事件の継続案件について,既になされた期日の指定は一括して取り消す。
・但し,保全やDV,人身保護,執行,倒産といった緊急性の高い案件については,事件ごとに判断する。
・刑事,少年事件に関しては事件ごとに期日の実施につき個別に判断する。
とするそうです(基本的に、上記東京と同じ対応だと思われます。)。

そうしますと、他の5地域でも同様になされるのではないかと思われます。

なお、他国では、裁判所の審理が止まっています(例えば、カリフォルニア州の裁判所では、3月下旬に60日の停止を公表しています。)。

 

第4 まとめ

以上概観しましたが、「緊急事態宣言」そのものは、必要な物資の確保等との関係で強制力があるものの、外出禁止措置等国民に強制をもたらすものでもないし、都市封鎖をするためのものでもないことが分かります。「緊急事態宣言」そのものでは、新幹線も止まらない、外出しても捕まりません。感染症法33条に基づく交通の制限や遮断があるとしても、72時間以内であることなど、かなり限定的にしか用いることは難しいと思います。

そうだとすると、「緊急事態宣言」には意味がなく、政府が弱いように思ってしまうかもしれませんが、それは国民の人権を過剰に侵害しないように作ってある法律だからです(この特措法が民主党時代に出来た法律だったので、公権力による緊急事態の強制力に抑止的であったとの説もありますが・・・)。政府に「要請」されたことが正しいことであれば、国民が頑張って、団結して合理的に行動し、新型コロナウイルスの蔓延を止めるようにしなければならないと感じます。これほど日本国民のモラルに期待している法律は、ないかもしれません。

そして、現実の政治では、法律が想定していない事態も発生します。上記のとおり法律は「要請」に対する補償や給付を想定していません。しかし、国民がモラルを有して要請に応える場合は、実質的に強制力があったと言えると思いますので、政治の力で、必要な補償や給付がされるべきでしょう。残念ながら、これは法律には書いていないことではありますが、政治判断がなされるべきことだとは思います。