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ドローンの法的規制を考える~京都御苑でドローンを飛ばせるか?~

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こんにちは(こんばんは)、藤本一郎です。

最近、当法人の大阪オフィスのすぐそばに、何やら真新しいお店ができたのですが、何屋さんなのか、最初よくわかりませんでした。よく見てみると、「ドローン」屋さんでした!

「大阪・北浜にDJI認定のドローン専門店 国内5店舗目、西日本初」(平成29年9月4日付船場経済新聞電子版)

ほんま、ここから大阪オフィスまで徒歩1分です。

実は私はドローンを所有していないのですが、いつかは飛ばして見たいなと思っています。だって、空から撮った動画とかを見ると、ワクワクするじゃないですか。また、私自身、乗り物が大好きでして、創知ではまだ乗り物系のお客様はいないのですが、前職時代は乗り物系のお仕事には特に心躍っておりました(乗り物系の企業の方、今がチャンスですよ!苦笑)。

でも・・・、最近、ドローンの規制が厳しくなっていると聞きますよね?そういえば、最近も、御所でドローン撮影をした人が、注意を受けたケースが相次いでいるというニュースを目にしました。

「京都御苑で無許可ドローン 訪日客や留学生の操縦相次ぐ」(平成29年9月19日付朝日新聞電子版)

いま、ドローンの法規制はどうなっているのでしょうか?
実は、ドローンのような「無人航空機」も、飛ぶ機械ですので、飛行機など「有人航空機」と同じ「航空法」という法律で規制されています。

いまの航空法132条は、無人航空機について、下記のように広範な飛行禁止を規定しています。

(飛行の禁止空域)
第百三十二条 何人も、次に掲げる空域においては、無人航空機を飛行させてはならない。ただし、国土交通大臣がその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないと認めて許可した場合においては、この限りでない。
一 無人航空機の飛行により航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがあるものとして国土交通省令で定める空域
二 前号に掲げる空域以外の空域であつて、国土交通省令で定める人又は家屋の密集している地域の上空

つまり、国土交通大臣の許可がない場合に「無人航空機」を飛ばせるのは、「国土交通省令で定める空域」「国土交通省令で定める人又は家屋の密集している地域の上空」以外ということになります。

(なお、航空法及び同施行規則では、仮に「無人航空機」として飛ばせる場所であったり、許可を得た場合であっても、飛ばし方(時間帯等)について更に規制を置いています。例えば、次の飛行は禁止されています(法132条の2)。
・日中(日出から日没まで)に飛行させること
・目視(直接肉眼による)範囲内で無人航空機とその周囲を常時監視して飛行させること
・第三者又は第三者の建物、第三者の車両などの物件との間に距離(30m)を保って飛行させること
・祭礼、縁日など多数の人が集まる催し場所の上空で飛行させないこと
・爆発物など危険物を輸送しないこと
・無人航空機から物を投下しないこと
が、本稿ではそこに詳しくは触れないものとします。)

国土交通省令である「航空法施行規則」 の236条及び236条の2が、上記法132条1号、2号に対応した規定を置いています。

(飛行の禁止空域)
第二百三十六条 法第百三十二条第一号の国土交通省令で定める空域は、次のとおりとする。
一 進入表面、転移表面若しくは水平表面又は法第五十六条第一項の規定により国土交通大臣が指定した延長進入表面、円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域
二 法第三十八条第一項の規定が適用されない飛行場の周辺の空域であつて、航空機の離陸及び着陸の安全を確保するために必要なものとして国土交通大臣が告示で定める空域
三 前二号に掲げる空域以外の空域であつて、地表又は水面から百五十メートル以上の高さの空域

第二百三十六条の二 法第百三十二条第二号の国土交通省令で定める人又は家屋の密集している地域は、国土交通大臣が告示で定める年の国勢調査の結果による人口集中地区(地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないものとして国土交通大臣が告示で定める区域を除く。)とする。

・・・この条文では何のことを言っているかわからないですよね、苦笑。
簡単に言いますと、施行規則236条1号は、要は航空路となる空域です。2号は、1号の規定する空域ではないけど、空港の周辺は安全のため規制されています。3号は、これら以外の高さ150m以上の空域です。

施行規則236条の2は、人口集中地区ですね。

国土交通省のガイドラインに図がついているのですが、(A)に相当するのが規則236条3号、(B)に相当するのが規則236条1号・2号、(C)に相当するのが、236条の2になります。

 
特に、「人口集中地区」は広いですね。都市部では、「無人航空機」を許可なく飛行させるのはほぼ不可能ですね・・・。

ああ・・・。がっかりです。飛ばせません。まあ、危険だから仕方ないのでしょうが・・・。

しかし、「無人航空機」の定義に注目しましょう。航空法2条22号では、「無人航空機」を次のように定義しています。

22 この法律において「無人航空機」とは、航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器であつて構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦(プログラムにより自動的に操縦を行うことをいう。)により飛行させることができるもの(その重量その他の事由を勘案してその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないものとして国土交通省令で定めるものを除く。)をいう。

おっと、「重量その他の事由を勘案して・・・安全が損なわれるおそれのないものとして国土交通省令で定めるもの」は、「無人航空機」に含まれないのです。

航空法施行規則5条の2は、「法第二条第二十二項の国土交通省令で定める機器は、重量が二百グラム未満のものとする。」と規定していますので、200グラム未満のドローンは、「無人航空機」ではないのです。

その代わり、こういった200グラム未満のドローンは、「模型航空機」として、別の規制を受けることになっています。具体的には、法99条の2、施行規則209条の3及び4(空港周辺や一定の高度以上の飛行について国土交通大臣の許可等を必要とする規定)のみが適用されます。つまり、上記(A)(B)(C)のうち、(C)人口集中地区でも、「模型航空機」であれば、飛ばすことができるのです!

やった、200グラム未満のドローンを買えば京都でも大阪でも原則飛ばせるじゃないか!

あれ、あれれ!?でもでも、御所でドローンを飛ばす外国人が問題だという冒頭に紹介した記事は、(A)(B)ではないですよね・・・。

別の法規制があるのです。
例えば、「国会議事堂、内閣総理大臣官邸その他の国の重要な施設等、外国公館等及び原子力事業所の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」(以下「小型無人機等飛行禁止法」といいます。)では、重要施設についてドローンの使用を禁止しています。なお、この法律で「小型無人機」は、「飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他の航空の用に供することができる機器であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦(プログラムにより自動的に操縦を行うことをいう。)により飛行させることができるものをいう。」と定義されており(同法2条3項)、航空法2条1項で定義される「無人航空機」とは別の定義になっています。つまり、「無人航空機」ではない「模型航空機」であっても、「小型無人機」には含まれることになるのです!ちなみに、法案提出時点においては、航空法2条の定義する機器と規定されていましたので、国会審議中に「小型無人機」の定義が広がり、「模型航空機」も含まれてしまう結果になったといえると思います。

しかし、この法律で、東京の皇居周辺でドローンを飛ばすことは規制されているようですが、なぜか京都の御所は規制されていないようです。規制地域については、こちらをご覧ください。

もう1度細かく御所でドローンを飛ばして警察沙汰になった件のニュースを検索し、調べて見ると、どうも、200グラムを超える「無人航空機」を飛ばして問題となったケースしかないようです。

京都御所で無許可でドローン飛ばし書類送検


http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20170921000025
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22238890T11C17A0AC8Z00/

いずれも、「住宅密集地」であることを理由として「航空法違反」で書類送検としています。外国人は、200グラムが境なんて知らないから、もっと大きな飛行が安定するドローンを日本に持ってきて使っているのでしょう。逆に言えば、「模型航空機」であれば、御所で飛ばすことができるのでしょうか?

例えば、「五山の送り火」に際して京都市が行っている「お願い」に次のような記載があります。

「1 小型無人機(ドローン)等について
 行事の円滑な執行及び観覧者等の危険防止のため,送り火中及びその前後にドローン等無線操作による飛行物の使用は御遠慮いただきますようお願いします。」

この記載からすれば、京都市や京都府の条例では、航空法や小型無人機等飛行禁止法とは別に条例でドローンを規制することは、していないようですね。実際調べた範囲では、ドローンを独自に規制する条例は見つかりませんでした(※調べた範囲では、という意味ですので、100%不存在を保証するものではありません。)

以上を総合すると、航空法で規制されている「無人航空機」ではない、200グラム未満の「模型航空機」であれば、法令上は、御所でドローンを飛行させることも、違法ではないようです。

ただ、京都御所は、既に紹介した記事に登場した写真でも明らかなとおり、「ドローン禁止」という看板を沢山置いています。京都御所の所有者である国(宮内庁)が「ドローン禁止」という看板を掲げているということは、仮に刑事法上は問題にならないとしても、ドローンに含まれると思われる「模型航空機」の飛行が、所有権の侵害であるとして、民事上問題となる可能性は残されていると考えます。