こんにちは/こんばんは、弁護士の藤本一郎です。
私は、あんまりクラウド化を信奉していないのですが、人によっては、クラウドなしには生きていけないという時代になっていると思います。
Google、Amazon、Apple等巨大企業にデータを預けている方にとって、その情報漏えいは心配の種ですが、最大のリスクは、その情報の管理処分権限を第三者に盗取され、データが使えなくなってしまうことではないでしょうか。
最近、私のクライアントから、「盗まれたApple ID(現在のApple Account)を取り戻して欲しい」という依頼を受け、何度か、無事に取り戻すことができたことがありましたので、クライアントの同意を得て、ここに少し紹介しておきたいと思います。
1. Apple ID(現在のApple Account)とは?
Apple ID(現在のApple Account)の公式の説明は、以下のとおりです。
Apple Account とは、Apple のさまざまなサービスを利用するときに使うアカウントのことで、お使いのすべてのデバイスをシームレスに連係させることができます。サインインすれば、App Store、iCloud、iMessage、Apple Music、Apple TV+ などを使えます。 https://support.apple.com/ja-jp/111001 |
詳しくは、上記リンクを辿って頂ければと思いますが、携帯電話の中に保存されている写真や、文書データ等について、1つのApple Accountで、複数のiPhoneやiPad、PC等で共有することができます。具体的には、iCloudというデータクラウドサービスを使って共有します。通常、Apple Accountを1つ作成しiCloudを有効にすると、iCloudで5GBまでは保存できるようになります。iPhoneやiPadのバックアップは、iTunesを使ってPCにすることもできますが、将来的にAppleはこれを廃止したい意向で、将来的にはiCloudにしかバックアップが取れなくなるかもしれません。
また、Apple Accountは、Apple Payという決済サービスにも紐付いています。現在、様々なサービスがApple Payで決済可能です。単にiPhoneやiPadのアプリを購入するというだけでなく、タクシーの料金の支払い等、日々の生活の中でもApple Payを使っている方は少なくないと思います。
2. 事案の概要(問題の発生)
このように、Apple Accountは、Appleの製品を使っている人にとって、生活の殆どに利用する場面があるくらい重要ではないかと思いますが、重要性が増せば増すほど、これを盗取しようとする人が出てきます。
実際、私のクライアントは、ある日突然、自分のApple ID/Apple Accountが盗まれてしまいました。その手口の詳細は不明ですが、Accountに設定されているパスワードを入力されてしまい、パスワードを含む様々な情報が書き換えられてしまって、Apple Accountを使った全てのサービスにログインできなくなりました。
乗っ取られた直後であれば、下記のリンクに記載のある手法で、Apple ID/Apple Accountを取り戻すことができます。
Apple Accountの不正利用が疑われる場合
しかし、もともとApple ID/Apple Accountに紐付けられていた全ての電話番号とメールアドレスを削除されてしった場合は、上記リンクの手法では、恐らく復元できないと思われます。少なくとも、私のクライアントは、できませんでした。
クライアントからすれば、Apple ID/Apple Accountそのものはどうでも良いのですが、大事なデータが入っているiCloudのデータを返して欲しい訳です。有料プランを使っていたクライアントは、定期的なバックアップが取られているだろうから、そのデータだけでも返して欲しいと、サポートセンターに電話してお願いしたようです。
しかし、クライアント自身では、Apple ID/Apple Accountを取り戻すことも、iCloudデータのバックアップを取り戻すこともできませんでした。サポートセンターによれば、iCloudのデータを定期的にバックアップして数日前の状態に復元するというサービスは、ないとのことでした。
ここまで御自身でされて、私のところに、何とかならないかというご依頼があったのです。
3. 私共の対応とAppleの反応
私共、弁護士法人創知法律事務所は、2022年にこの種の案件を初めて受任して以後、数年にわたり、Apple ID/Apple Accountを取り戻すという案件に、真剣に取り組んできました。過去に少なくとも複数件、Apple ID(現在のApple Account)を任意の交渉で回復し、紐づけられているiCloudのデータの復旧に成功しています。しかし、私共のApple製品に対する愛や、私のクライアントのApple製品に対する愛を十分に理解して頂けないのか、訴訟になったケースも複数件あります。
私共は、Apple製品ユーザーがApple製品を愛していること、しかし、iCloudに写真や動画を保存した結果、ローカルのiPhone等に保存されていた写真や動画が削除されてしまうことに無自覚で、ある日突然、iCloudが使えなくなり、その写真や動画が、画質の粗いサムネイル以外見えなくなってしまうという悲劇が発生していることについて、多いに悲しんでいることを、何度も何度も見て来ました。復旧に成功して喜ぶ姿も沢山見ていますが、できれば、弁護士が介入しなくても、容易に取り戻すことができる仕組みが確立して欲しいです。しかし、少なくとも現時点では、我々が代理し、それなりに時間や労力をかけて、やっと復旧されているというのが実態ではないかと思います。
4. 終わりに
私共は、Apple ID/Apple Accountを取り戻すという業務に3年間取り組み、一定の成果を挙げました。
もっとも、課題は少なくありません。
もしも、弁護士法人創知法律事務所にApple ID/Apple Accountを取り戻すことの代理を依頼するのであれば、次のことについて、ご理解をお願いします。
(1)他の同種依頼者との情報共有をお願いします。私共は、いつか私共に対する依頼なしに、Appleがもっと広く、簡単にApple ID/Apple Accountを取り戻すことができるようになることを望んでいます。故に、私共への依頼については、やむを得ない状況(例えば、Apple側との和解の条件となる場合など)がある場合を除き、その業務中の成果について、他の同種依頼者と共有させて頂くことについて、ご理解をお願いします。通常のご依頼と異なり、同じような状況にある方が多数いらっしゃいます。できれば、可能な限り多くの方を助けてあげたいです。
(2)有償であることについて、ご理解を下さい。任意交渉のみで終わる場合、訴訟まで発展する場合といくつかパターンがあり、ここには記載しませんが、一律でそれなりの費用をお願いしています。Apple側が簡単には応じて頂けないため、相応の労力がかかっているためです。
(3)弁護士への依頼ですので、匿名での受任は受けておりません。依頼者を特定するのに必要な一定の情報の提供をお願いしております。報酬を御支払頂けるような場合であっても、必要な情報のご提供なしには、ご依頼を受けることができません。また、弁護士への依頼ですので、最低1度は、実際にお会いする必要があります。この点も十分ご理解頂けますと幸いです。
もしもご依頼を検討される場合には、上記を十分お読み頂き、メールで当方代表メール(cilpc@ci-lpc.com)までお問い合わせ下さい。
どうぞよろしくお願いいたします。